Freitag, Januar 17, 2020

その時はじめてルネサンスは来る


やっぱり歴史っていうのはただの昔のお話なわけじゃなくて、時代精神の運動っていうか、大きなメタな動きが水面下でうねっているのであってそこには確固たる傾向とか法則とか方向性とかがあるんだなー。それはもちろん個々の人間なくして成り立つものではないのだけどその個々の人間はどんな偉人でも孤立した凡百と隔絶した偉大な精神というわけではなく無数の人間の中からその時代そのものとして表れてくる(だから列伝っていうのは何百と並べるところに意味がある)。


ホイジンガ『中世の秋』は時代史で、中世の最後80年ぐらいのあいだ反映したブルゴーニュ公国の表象文化史。中世晩期を生きる人々は何を考えどう表現していたのかを4代にわたるブルゴーニュ公たちとか宮廷画家にして外交官だったファン・エイクのような人々を中心に描く。オランダとライン西岸地域にあってこの比較的短期間に繁栄して没落した強国


15世紀フランスにおいて人文主義を取り入れたわずかな人々の言うことはまだルネサンスらしい響きがない。というのはその心性、その性向がいまだ中世のものだからだ。そんな人生の基調音が変化する時、水の流れが死という人生のあきらめを押し流して新鮮な風が吹き込む時、自分たちがかくも長きにわたってみずからを反映させてきた古代の人類のいかなる栄光をもその手に取り戻すことができるのだという悦びに満ちた認識が熟する時、その時はじめてルネサンスは来る。

Keine Kommentare: