アニオタは多いけど、古い日本映画好きというシブい奴もいて、そんな人のおかげでドイツにいるくせに『鬼婆』っていう1960年代の映画を見たんですよ。戦乱を逃れて芒ヶ原に隠れ住む三人の男女。老いた女は若い二人から取り残される不安と嫉妬に捕われていく。そこに鬼の面を被った武者が訪れるが…
本当に老女に感情移入を促すようによくできていて、若く美しい女の残酷さとよく対をなしている。老女の孤独さが悲しくて、生計の不安も、否応なく確認させられる肉体的/容姿の衰えも若い女のせいでますます際立つ。
若い女は中盤までセリフらしいセリフもなくやや無個性に見えるのだが、男との逢瀬や老女への態度からだんだんその性格が際立ってくる。野性的で現世的な、戦乱の時代の女ならいかにもこうなりそうなリアルさを持っていて、その強さが終盤になると激しく噴出してくる。
男は負け戦から逃げ帰ってきて、自分が見殺しにした親友の母親と嫁のところに転がり込んでくるのだが、親友の嫁を狙ってはその義母に邪魔されるという役どころ。野性味と剽軽さがあって憎めないタイプなのだが、若い女を誘惑しながら老女に邪険にする。
老女は気丈な女なのだが、息子は戦に取られ、嫁がいなければ落ち武者狩りの裏稼業もおぼつかない。男に嫁が奪われないかと心配するが、男から女として扱われないことへの不満と嫁の若さへの嫉妬に陥っていく。
「お前にうちの嫁をとられては暮らしていけんでの。それよりわしなんぞどうじゃ。ちぃとは年をとったが、これで結構中身はまだまだ女じゃぞい」「へっ誰がてめぇみてぇなババアなんぞ」「言うたな!嫁に手を出してみぃ、ただじゃおかん」「好きおうとるのだからわしらの勝手じゃ」「そりゃどうかの!」
「昔、都の偉い坊さんに聞いた話じゃ。みだらなことをすれば、地獄に落ちるそうじゃぞい」「おっかぁ、地獄なんぞあるもんかい」「いやいやある。お前も、わしの息子の嫁じゃ、あれが死んだかどうかも分からんのに男とつるんでみぃ。恐ろしいことになるでの」「ハチが見たと言うんじゃ、死んだわい。」
*男「楠正成の湊川の戦で仲間がたくさん死んでのう。帝は吉野山に逃げ込んだとよ。都は都で荒れ放題じゃ。なぁにざまぁ見ろだ。あれだけ殺して自分だけ生きとるんじゃ、せいぜい苦しむがいいや」老女「味方も敵も死なせて自分は鬼の面被って逃げたか!これが報いじゃ!ざまぁ見ろい!」若い女「さんざん脅かしよってこの婆!ずっとその面をつけてるがええ!ざま見ろじゃ!」
男「帝は吉野山に逃げ込んだとよ。都は都で荒れ放題じゃ。なぁにざまぁ見ろだ。どっちもせいぜい苦しむがいいや」老女「味方も敵も死なせて自分は鬼の面被って逃げたか!これが報いじゃ!ざまぁ見ろじゃ!」若い女「さんざん脅かしよってこの婆!ずっとその面をつけてるがええ!ざまぁ見ろい!」
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